30年間ともに水を守り、これからもパートナーであり続ける

関西の空の玄関[関西国際空港]を水で支える
[住友重機械エンバイロメントグループ]

6 安全な水とトイレを世界中に
11 産業と技術革新の基盤をつくろう
14 海の豊かさを守ろう
メインイメージ

国内初の完全24時間運用の国際空港として誕生した「関西国際空港」。海上に建設された空港島には旅客ターミナルビル、ホテル、警察、消防署などが整備され、一つの都市を形成していると言えます。
空港ターミナルでは多くの旅行者が行き交い、それを支えるオフィスや施設でも空港を安全安心に動かし続けるべくたくさんの人が動き回っています。このような空港都市の水インフラを支えているのが、関西国際空港の「排水処理施設(浄化センター)」です。
空港を運営する「関西エアポート株式会社」のパートナーとして、開港以来24時間365日、関西国際空港の水処理を支えているのが住友重機械エンバイロメントの関連企業である「住重関西施設管理株式会社(以下、SKK)」です。今回は2社の対話を通じて、水処理の取り組みや関係性についてご紹介します。

「再利用率60%以上」を誇る関西国際空港の水処理サイクル

Q:関西国際空港の水処理設備の特長を教えてください

彦谷 茂幸 様

関西エアポート株式会社
技術本部 特殊設備部 特殊設備部長

彦谷 茂幸 様

関西エアポート・彦谷氏:関西国際空港は、大阪湾という閉鎖性水域に建てられています。閉鎖性水域は水の入れ替わりに時間がかかり、水質汚濁問題などが発生しやすい環境です。このため大阪湾への放流される処理水に対して、厳しい水質規制が課せられています。約30年前の関西国際空港の建設当初から、私たちには「環境への負荷低減に取り組む」という考えがあり、最新技術を有した下水処理場をモデルにして浄化センターを設計、建設し、運用を開始しました。
また浄化センターの特徴として、法的に下水処理場でなく、浄化槽という位置づけになっております。日本で最大の浄化槽です。加えて当時から循環型社会の構築に寄与するという観点より、下水処理水の高い再利用率を誇る設備となっており、供用開始以来約30年稼働しています。

菊池 清友

住重関西施設管理株式会社
代表取締役社長

菊池 清友

住重関西施設管理・菊池:住友重機械エンバイロンメント(2007年に住友重機械工業から分社)が「環境負荷の低減」「循環型社会への寄与」という思想を踏まえて、関西国際空港排水処理施設(浄化センター)を建設いたしました。その浄化センターの運用・維持管理をSKKが供用開始以来任せていただいており、大変長いお付き合いとなります。

仙波 慶和

住重関西施設管理株式会社
取締役 統括部長

仙波 慶和

住重関西施設管理・仙波:関西国際空港の水運用においての最大の特徴として、下水処理水の再利用率60~70%を実現しています。関西国際空港で発生した下水は、空港内にある浄化センターで汚水の処理を行い、中水※1として主に関西国際空港施設内トイレの洗浄水に再利用されています。国内の生活排水の平均再利用率は約1.5%と言われていますが、関西国際空港は大幅に高い再利用率を誇っています。

※1中水:下水処理水を消毒し再利用する水。飲むことはできないが、水洗トイレや工場用水として使える水

※所属、・役職名はインタビュー当時のものです

30年間関西国際空港の水を共に守る
「住友重機械エンバイロメントグループ」

Q:水処理設備の運用業務について教えてください

仙波 慶和

住重関西施設管理株式会社
取締役 統括部長

仙波 慶和

住重関西施設管理・仙波:SKKは、浄化センターをはじめ、空港施設の上水・中水・下水など給排水全般の運用管理の委託を受け、およそ50人のメンバーで24時間365日その役割を担っています。運用管理業務としては、法的に定められた水質を維持するために、日々流入してくる汚水や各水処理工程において、水に含まれる様々な成分や濃度を分析し、水処理が問題なく機能しているかを判断しています。
また各設備の重要度、劣化進行度などを評価し、計画的に機械設備や電気設備の保守点検修繕なども行っております。また突発で発生するトラブルも関西エアポート様と相談しながら対応しています。

井上 智之

住重関西施設管理株式会社
業務課

井上 智之

住重関西施設管理・井上:業務課では、日々の運用保守管理業務や修繕計画などを集約し、関西エアポート様に報告する業務を担っています。また法に基づく検査の申請、コンプライアンス遵守の促進、運用に伴うサポート業務などを担っています。

横谷 真菜

住重関西施設管理株式会社
業務課

横谷 真菜

住重関西施設管理・横谷:業務課での庶務全般を担当しています。まだ入社して日が浅く、高度な技術と知識を必要とする水処理の世界に戸惑うこともありますが、周りの先輩方に教えていただきながら、日々勉強しています。お客様である関西エアポートの方々からも教えていただいています。

柘原 正明 様

関西エアポート株式会社
技術本部 特殊設備部
供給処理施設グループ

柘原 正明 様

関西エアポート・柘原氏:浄化センターからの日々の報告や提案を受け、安全な水を安定供給するための補修計画やシステムの改善策を一緒に考えています。SKKとは約30年のビジネスパートナーであり、長きにわたる信頼関係があるからこそ、時には運用維持管理内容に関してさらなる検討を依頼し、総合的な観点からもいろいろ厳しい注文をすることもありますが、グループのネットワークをいかしてニーズに応えて頂いています。

松村 篤 様

関西エアポート株式会社
技術本部 特殊設備部
供給処理施設グループ

リーダー 松村 篤 様

関西エアポート・松村氏:コロナ禍の影響で旅客数が激減する中、空港施設で発生する下水の質・量とも大きく変わっています。最適な運用管理において今後も無理難題をお願いすることが多くなると思います。浄化センターや給水ポンプ場など、関西国際空港の施設への深い理解を持つ住友重機械エンバイロメントグループに対しては、運用管理技術と新技術の提案力に期待しています。

※所属、・役職名はインタビュー当時のものです

SDGsのその先へ、関西国際空港が目指す徹底的な環境保全の未来

Q:今後の関西国際空港の水処理設備における展望について教えてください

彦谷 茂幸 様

関西エアポート株式会社
技術本部 特殊設備部 特殊設備部長

彦谷 茂幸 様

菊池 清友 様

住重関西施設管理株式会社
代表取締役社長

菊池 清友

関西エアポート・彦谷氏:弊社は、関西国際空港、伊丹空港、神戸空港の3つを運営しており、各々の空港で「空港カーボン認証※2プログラム」のLevel4を2021年に国際空港評議会から認定されました。Level4の認定は国内空港では初です。「絶対的CO2排出の削減を達成するため、空港運営の改革と空港事業者との関与強化」が条件となっており、これは「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」を公約するなど、温室効果ガス削減に向けた中長期の取り組み方針が評価された結果です。この高い目標の実現には排水処理施設での取り組みも不可欠です。
30年前に建設された排水処理施設も老朽化が進行しているため順次更新が必要です。例えば設備をただ更新するのではなく、最新設備の比較検討として、省エネの観点や、作業省力化等の作業環境改善等を考慮した機器選定が重要となっています。
カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すという社会的課題への取り組みとして、関西エアポートもさまざまな施策を検討する必要があると考えています。
※2空港カーボン認証(ACA:Airport Carbon Accreditation)は、2009年に空港会社の国際機関である国際空港評議会(ACI:Airports Council International)によって作られたプログラムであり、認証空港は全世界へ広がり、2022年11月時点で424空港にのぼる。空港向けの国際カーボン管理基準としては唯一のもの。

住重関西施設管理・菊池:「約30年のお付き合い」におごらず、水処理技術をはじめとした関西エアポート様からの技術的なご要望に住友重機械エンバイロメントグループとしてお応えします。更に先の未来を描けるよう、一丸となって対応いたします。水の品質を確保するのは大前提。今後老朽化が進んでいる施設、設備の更新、省エネや創エネなどの施策を積極的に提案し、関西エアポート様の発展に寄与します。

※所属、・役職名はインタビュー当時のものです

浄化センター生物反応槽 全景

浄化センター生物反応槽 全景

浄化センター管理棟 正面

浄化センター管理棟 正面

関西国際空港連絡橋 水道管

関西国際空港連絡橋 水道管

施設概要

排水処理施設
処理対象人員38,500人/日(将来77,000人/日)
生活排水処理施設 10,050m³/日(将来20,100m³/日)
特殊排水処理系 3,300m³/日
中水供給施設 9,000m³/日
給水ポンプ場
送水ポンプ⏀200×4.33m³/分×75kW×4台
受水槽420m³
管渠施設
上水配管 総延長約16km(⏀500~75 連絡橋含む)
中水配管 総延長約12km(⏀450~75)
下水配管 総延長約14km 中継ポンプ場19ヶ所